寝ている赤ちゃん

【モロー反射とは?】夜泣きとの関係性はありますか?

ライター:松本
ライター:松本

はじめての育児で夜泣きに悩んでいる方も多いと思います。赤ちゃんはなぜ泣くのでしょうか。一つの原因である「モロー反射」について、佐藤先生にお話を伺いました。

佐賀大学名誉教授 佐藤珠美先生

佐賀大学名誉教授
佐藤珠美 先生

大阪大学医学系研究科保健学博士後期課程修了。福岡赤十字病院看護係長、日本赤十字九州国際看護大学大学院研究科研究科長、佐賀大学医学部看護学科生涯発達看護学講座教授などを経て2023年3月に退職。母性看護学・助産学、ウィメンズヘルスを専門とし、妊婦相談、産後腱鞘炎、産婦の膀胱ケアなどの研究に携わるほか、教授設計学を用いたe-learningの教材開発も手掛ける。乳幼児のスキンケア、寝かしつけや抱っこなど、産後の母親に向けた情報発信にも注力する。 (一般社団法人 ヘルスサポーターズイノベーション )

モロー反射とは、赤ちゃんの「原始反射」の一つ

寝る赤ちゃん
モロー反射とは、別名「抱きつき反射」とも言われる赤ちゃんの原始反射の一つです。これは、赤ちゃんが生まれたときから備えている人間として生き抜くための反射的な運動のことで、代表的なものに「吸てつ反射」「歩行反射」などがあります。

モロー反射

新生児 (生後0~4ヶ月くらい) に見られる原始反射で、音や光などの刺激が与えられたときに手足がビクっと動き、何かに抱き着くような反応のこと。

吸てつ反射

唇にものが近づくと反射的に吸い付く動きのこと。

歩行反射

赤ちゃんを立たせるように身体を支えてあげると、歩いているように足を動かす反射。歩行能力として備わっているものですが、歩きはじめる時期がくるまでは身体のなかに眠っています。

モロー反射が起きる理由

いずれの原始反射も、自分の身を守るために人間の本能として備わっているものです。モロー反射は、音や光などの外界からの刺激を受けたときや、抱き上げ・抱きおろし、お風呂に入れるときなど「姿勢が変わったとき」に危険を察知して、本能的に避けようとするために現れます。

モロー反射は、いつからいつまで見られる?

個人差がかなりありますが、一般的にモロー反射は生後3・4ヶ月~6ヶ月頃で消失すると言われています。赤ちゃんに筋力がついてきて、自らの意思で抱き着き行動ができるようになると「反射」から「行動」へと移るため、次第に見られなくなります。

「夜泣き」と「モロー反射」の関係性は?

寝る赤ちゃん
生まれたばかりの赤ちゃんにとっては昼夜の区別がないため、泣いているのが「昼」なのか「夜」なのかは、関係がありません。そういった意味で「夜泣き」と言ってしてしまうのは、大人の都合ではあるのですが…。夜泣きで困っている方の中には「抱っこで寝かしつけたあと、眠ったと思ってベッドに下ろそうとするとモロー反射で起きる」この繰り返しで、抱っこのまま朝を迎える人も少なくありません。

赤ちゃんは、長時間眠ることができない

生まれたばかりの赤ちゃんは、眠りが浅く、起きている時間と寝ている時間の間隔も短いことが特徴です。お腹の中にいるときに20~40分くらいの短い睡眠を繰り返していたために、長時間眠ることができないのです。

睡眠パターンの特徴

参考:未就学児の睡眠指針 – 厚生労働省
(2018年3月31日発行)

寝て、おっぱいを飲んで、寝て、というサイクルを繰り返しながら少しずつ胃が大きくなり、栄養もたくさん取れるようになって、睡眠も充分にとれるようになります。

赤ちゃんの眠りは「浅い」

ただ、睡眠時間は長くなっていくものの眠りは浅いため、小さな刺激でも目が覚めてしまいます。モロー反射によってビクっと動いた自分自身に驚いて泣いてしまうのです。

モロー反射が原因で、寝かしつけが上手くいかないときは?

話をする佐藤先生

まずは、モロー反射を引き起こしやすい要因 (物音、光の刺激) を除き、おくるみを活用してみましょう。安心して入眠するための環境 (冬の室温20℃・湿度50%程度、夜間にブルーライトを浴びせない) をつくり、赤ちゃんもママもリラックスできることが大切です。

それでも、寝ているときにモロー反射によってギャーっと泣き出すことは仕方のないこと。暑すぎないか、お腹が張りすぎて苦しくないかを確認したら、そのあとは少し様子を見ましょう。時間が経てば落ちつくのですが、「寝つけていないんじゃないかな」と心配になって、ママ・パパが赤ちゃんを触りすぎることがまた刺激になり、余計に目を覚まさせてしまうこともあります。

なので、泣きはじめても15分くらいじっと見守ってみてください。赤ちゃん自身も周りの環境や刺激にびっくりしながら、あるいは「暑いな~」「眠れないな~」とゴソゴソ動きながら、寝つく体勢を整えています。自分で眠る力を信じて、まずは様子を見守ることが大切だと思います。

「おくるみ」や「スワドル」の効果はありますか?

寝くるみに包まれて寝る赤ちゃん

モロー反射を防ぐために、おくるみやスワドルで包んであげることは、昔から活用されている育児の知恵です。反射を抑えるだけでなく、お腹の中にいたときのような温かさや安心感を与えることができるのもポイントですね。

赤ちゃんを危険から守る工夫

寝る赤ちゃん
地域によって、それぞれの習慣や事情によるところが大きいですが、世界的におくるみやスワドルは昔から使われています。

例えば、遊牧民族。彼らは「子どもが泣くと、外敵である動物から襲われる危険性」があり、特に夜は危険性が高まるため、長い時間眠ってくれるための工夫としてスワドルが使われてきました。万が一、危険に襲われたとしても、赤ちゃんを捕まえて「すぐに逃げられる」という側面もあったようです。

また、アンデス地方などの中南米では、子どもがハイハイして崖から落ちてしまわないように、歩き出すまでは適度にぐるぐる巻きにしておくそうです。一度もハイハイしないまま「スワドルを外した途端に歩き出す」なんていう子育てもあるみたいですよ。

世界各国の文化や習慣、地域に適応した子育ての方法を知ると、「正解」って何だろうと思いますね。

モロー反射を「抑えたい理由」を考えよう

話す佐藤先生

「外敵や環境から赤ちゃんの身を守る」という点では有効なおくるみやスワドルですが、「股関節脱臼」の観点から考えると注意したいこともあります。股関節脱臼が原因で歩行に支障が出ることも、事実だからです。

現代の日本において、外敵から身を守るためにおくるみやスワドルを必要とすることは、ほぼないと思います。では、なぜモロー反射を抑えないといけないのでしょうか。根本的なところに立ち返って、考えることも大切かもしれないですね。

「寝かしつけてから家事をやりたい」「やらなければいけない仕事が残っている」という理由は少なからずあると思います。しかし大人の事情に寄りすぎず、夜しっかりと眠って生活リズムを整えることが、子どもにとっても大人にとっても健やかに生きていくために必要であることを忘れないようにしたいものです。

LINEで500円オフクーポンプレゼント