指をしゃぶる赤ちゃん

【歯並びに影響ないかな…】矯正歯科医師に聞く、歯並びとおしゃぶり

ライター:白川
ライター:白川

「指しゃぶりが長くつづくと出っ歯になる」という声も聞きますが、本当なのでしょうか?赤ちゃんの指しゃぶりは気にならなくても、3~4歳を過ぎても指しゃぶりをしていると、ちょっと心配になってきますよね。

そこで今回は、矯正歯科の先生に「実際、指しゃぶり (おしゃぶり) は、歯並びに影響あるのでしょうか?」「上手な止め方はありますか?」と、聞いてみました。

指しゃぶり (おしゃぶり) は歯並びを悪くする?

指しゃぶりをする赤ちゃん

指しゃぶりがなかなか止められなくて、心配しているママも多いと思うのですが、実際のところ、歯並びに影響を及ぼすものなのでしょうか?

赤ちゃんが生まれてすぐに指しゃぶりをするのは生理的なことだと言われていて、とくに長い期間つづくわけではなければ歯並びに影響することはないので、心配しなくても大丈夫ですよ。ただ、3~4歳をすぎても指しゃぶりがつづくとなれば、徐々に歯並びにも影響が出てくると言われています。

影響があるとすれば、どんな原理で?

指しゃぶりによる歯並びの影響としては、2パターンです。症例と一緒に解説していきますね。こちらは、6歳までずっと指しゃぶりをしていた子が実際に相談に来られたときの歯型です。

歯の型

上顎前屈 (じょうがくぜんくつ)

上顎前屈の歯形

まさに、前歯のところにちょうと指が入るんですね。どうなっているかというと「指で歯を毎日押している」状態です。弱い力であってもそれが毎日つづいてしまうと、歯のかみ合わせのときに上の歯が指で押されてしまうので「上顎前突 (じょうがくぜんとつ) 」という、いわゆる「出っ歯」になってしまいます。

開咬 (かいこう)

もう一つは、この隙間に指が入っている状態がつづいて噛んだときの上下の歯の被さりが浅くなってしまい、奥歯は噛み合っているけど、前歯が嚙み合わない状態になる「開咬 (かいこう) 」です。

開咬の歯形

通常の歯並びは「アーチ型」になるのですが、そうではなくて「V字型」になってしまうのが、指しゃぶりによる歯並びへの影響です。指で歯が押されてしまう状態が何年つづくかで症状は変わってくるから、早く止められれば影響は少ないのですが、長くつづいてしまうと影響が徐々に大きくなっていきます。

「指しゃぶり」も「おしゃぶりも」も、影響を及ぼすという点では同じですか?

そうですね。長期間ずっと歯に力を与えてしまう、という点で「指しゃぶり」も「おしゃぶり」も同じです。ただ、おしゃぶりの場合は使い方によるかなと思います。例えば、2歳くらいまでの子どもをお母さん一人で外へ連れていったときに、バスの中やお店の中で大泣きしはじめてしまって「どうしよう、早く泣き悩んでくれないかな、周りに迷惑かけちゃうな」とか、あるいは夜なかなか寝ついてくれなかったり夜泣きがづついたりして、体力的にも精神的にも参ったという辛い経験をしたことある人って多いと思うんです。

だから、どうしても困ったときに「おしゃぶり」を使うというのは全然いいと思います。ただ日常的に「赤ちゃんが泣いたらとりあえず使おう」という感覚で安易に使ってしまうと、おしゃぶりを吸うことが「癖」になってしまい、おしゃぶりからの卒業が難しくなることもあるので、そこには注意が必要ですね。

乳歯だけでなく、永久歯にも影響がありますか?

永久歯への生え変わりは、6歳くらいから始まります。その時期まで指しゃぶりをしている場合、せっかく永久歯が生えはじめたのに指で歯を押す力を与えてしまい、同じように歯並びに影響を及ぼしてしまいます。

ただ、永久歯が生えて間もない頃までに指しゃぶりを止めることができれば、永久歯に生え変わった後でも自然に悪影響が消えていくこともあります。例えば、7歳まで指しゃぶりをしていた子に、指しゃぶりを止めるようにアドバイスをした後(アドバイスのポイントが重要なのですが、また後ほど…)4カ月後には開咬が改善された例もありました。

指しゃぶり (おしゃぶり) は「いつまでなら歯並びに影響ない」というのは、ありますか?

一般的には3~4歳くらいまでなら影響がないと言われています。なぜかというと、生まれたての赤ちゃんはおっぱいを吸って成長するので、生きていくために「吸う」ことが大切だからです。「吸う」こと自体は生理的な反射だったり、まだ話すことができない時期の、口の感覚を楽しむ行為だったりします。

生後半年くらいから乳歯が生えはじめて、離乳食をとおして「食べること」を練習していきますが、そのころから徐々に栄養の摂取源もお母さんのおっぱいから「食事」に切り替わるようになっています。そうすると「吸う」から「噛む」行為になっていくんですね。

だから、1歳を過ぎると「吸う」行為というのは生きていくためではなく、心の「安定」やお母さんとの「つながり」といった、精神的なことに起因しています。

指しゃぶりは、頑張って「止めさせた方がいい」ですか?

実はうちの下の子も、指しゃぶりが長かったんです。あまり長くつづくのは、歯並びにとって悪いことだと分かっていたので、徐々に止めさせたいなとは思ってはいましたが、でも、パッと止められるものでもないですよね。本人にとって心の拠りどころになっているのも分かるから、無理やり「いつまでに絶対やめよう」って決めてしまうと、ママも苦しいし、本人も苦しい。

たとえ、1カ月早く止められたとしてもその差での影響はそれほどないので (もちろん、年単位では影響力が変わってくるのですが) 焦らずに「その子なりの早い段階で」という考え方がいいのかなと思っています。

指しゃぶりの「上手な止め方」は、ありますか?

止めようとしている子の年齢によって「止め方が違う」というのが実感です。小学校2~3年生になると、理性が養われているので「指しゃぶりをつづけていたら、歯並びが悪くなっちゃうよ」と説明してあげれば、ちゃんと理解してくれます。そうすると「出っ歯になったら嫌だな、だから止めよう」ってなるんですね。

ご褒美シール

自分から辞めたいと思える段階であれば、指しゃぶりをしなかったときは「ご褒美シールをあげる」など、子どもと一緒に楽しめる工夫をしながら止めるためのサポートをしてあげるといいと思います。その段階に至る前の年齢の場合は、「止めなきゃ」という感情よりも「やりたい」の方が勝っちゃうこともあるから、そのときは以下の方法が有効です。

「嫌だな、怖いな」を上手に伝える

理性で分かる年齢ではない場合は、例えば「指しゃぶりすると指にタコさん (できもの) ができるよ」とか「親指食べちゃったら親指さんかわいそうだよ」とか、もちろんあまりにも脅かしすぎてはいけないけど、その子にとって「嫌だな、怖いな」と思える言葉で、上手に伝えてあげるのが大切だと思います。

指しゃぶり防止「マニュキュア」

私が使っていたのは、指しゃぶり防止用のマニキュアです。口に入れても安全なものですが、苦味成分が入っているので舐めると苦いんです。寝るときに塗ったりして「指しゃぶりの癖をなくす」ために使っていました。

手が口にいかないように、工夫する

手をつないで寝てあげたり、手が口にいかないようにぬいぐるみを抱かせてあげるのもいいと思います。あとは、指先に顔や毛糸がついた「指しゃぶり防止の手袋」など、楽しく止められるような工夫がされているアイテムもおすすめです。

専門家に相談するタイミングは?

「指しゃぶりがなかなか止められなくて」ということで、長くつづくと歯に影響が出ることもあるのですが、「矯正治療」という観点からのタイミングで言えば、治療できる年齢 (目安としては小学校1年生くらい) であるかどうか、というのは基準としてあります。

「小児歯科」であれば、保育園くらいからでも歯並びを診てくださるので、直接治療ができなくとも「止めたいと思ってはいるけど、どんな方法がありますか?」と、アドバイスをもらうことはできると思いますよ。

子どもって、自分の中で決まったルールやルーティーンを持っていたりするので、例えば「保育園に行くときには必ずここを通る」「夜はこれをする」などと同じように、指しゃぶりが癖や習慣になってしまうと、すぐに止められるものでもないかなと思います。

そうは言っても、中学生や高校生になって指しゃぶりをしている子はいないですから、いつかは辞められることなのでそこは安心してください。もし歯に影響が出てしまっても、矯正治療で何かしらの対処はできます。だから、焦らずに「その子なりの範囲内で、早めに」くらいの気持ちで、いいのかなと思っています。

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