抜け毛を気にする女性

【産後の抜け毛は、元に戻りますか?】ママの不安を専門家に相談

ライター:白川
ライター:白川
佐賀大学名誉教授 佐藤珠美先生

佐賀大学名誉教授
佐藤珠美 先生

大阪大学医学系研究科保健学博士後期課程修了。福岡赤十字病院看護係長、日本赤十字九州国際看護大学大学院研究科研究科長、佐賀大学医学部看護学科生涯発達看護学講座教授などを経て2023年3月に退職。母性看護学・助産学、ウィメンズヘルスを専門とし、妊婦相談、産後腱鞘炎、産婦の膀胱ケアなどの研究に携わるほか、教授設計学を用いたe-learningの教材開発も手掛ける。乳幼児のスキンケア、寝かしつけや抱っこなど、産後の母親に向けた情報発信にも注力する。 (一般社団法人 ヘルスサポーターズイノベーション )

目次

出産後、抜け毛が多くなるのはなぜ?

話す佐藤先生
産後脱毛症の原因は、ヘアサイクルの変化です。生理的な状態であれば、初期成長期⇒成長期⇒退行期⇒休止期⇒脱毛⇒初期成長期…と繰り返されていきますが、妊娠中の女性ホルモンの増加によって、このサイクルに変化が生じます。

生理的な状態のヘアサイクル

通常は、初期成長期⇒成長期⇒退行期⇒休止期⇒脱毛⇒初期成長期・・・を繰り返します。成長期:2~6年、退行期:2~3週間、休止期:2~3ヶ月が目安です。

休止期の毛は頭髪の10%程度。髪の毛の本数は10万本程度と言われていますので、1日の脱毛数は100~150本以内であれば正常です。動物のように一気に抜けることはありませんが、秋から冬にかけて脱毛数が増加します。

妊娠期

妊娠中は女性ホルモン (エストロゲン) が増えたことで細胞分裂が活発になります。成長期が延長するため、髪の毛が抜けにくくなり髪に艶も出ますが、これが産後の脱毛に影響します。

出産後

分娩が終了して女性ホルモンが減少する (妊娠前に戻る) ことで、妊娠中に抜けなかった髪の毛が一気に抜けることを「産後脱毛症」と言います。出産をされた8割以上の方が経験するため、育児ママにとってよくある悩みの一つです。

産後脱毛症は、妊娠期に延長した成長期が「退行」と「休止期」を経て「脱毛期」に入るため、髪に触るだけで抜けてしまったり、新しくできた毛に押し出されて抜けるため、大量の抜け毛が発生したように感じます。

しかしこの現象は、下に新しい毛が生まれていることの表れでもあります。脱毛後2~3 ヶ月後から髪が生えはじめ元のヘアサイクルに戻るのが通常です。ただし産後の脱毛には、「ストレス」「大量出血」「重度の疲労」「睡眠不足」「栄養不足」も影響するため、育児中の生活リズムや環境を整えることが大切になってきます。

実は、新生児脱毛も原因は同じ?

最近の研究によると、赤ちゃんの後頭部の脱毛がお母さんと同じように、ヘアサイクルにおける「成長期の延長」に起因することが報告されています。実は赤ちゃんにも髪の「休止期」があって、生後2~3ヶ月ごろに見られる後頭部の脱毛は、休止期に入っている髪が少しの摩擦でも抜けやすくなることで生じているようです。もちろん、抜けた髪の下には新しい髪が準備されていますので、時間の経過とともに脱毛は消えていきます。

産後脱毛は「いつからいつまで」つづく?

個人差がありますが、出産後2~3ヶ月頃からはじまり、出産後6 ヶ月~1 年程度までつづきます。初産婦よりも経産婦の方が、早い時期から脱毛を感じやすいという報告も出ています。

産後脱毛の「ピーク」は?

こちらも個人差がありますが、出産後4~6ヶ月ごろがピークです。

育児ママのよくある悩みや相談事

話す佐藤先生

脱毛期に入る出産後2~3ヶ月になると、シャンプーや髪を乾かしているときなど、髪がどっさり抜け落ちて、ショックを受ける方が多いようです。

よくある悩み
  • お風呂場の排水溝が、抜け落ちた髪でいっぱいになる
  • 櫛に髪がどっさり絡みつく
  • このままもとのボリュームに戻らないのではないかと不安になる
アドバイス

妊娠中は、ヘアサイクルが「成長期」に入っていますので髪に艶が出て抜けづらい時期がつづいていますが、出産後に「休止期」に入ると、反動で髪が一気に抜けます。これが「脱毛の正体」です。

びっくりしてショックを受けると思うのですが、産後脱毛は自然に元に戻りますので過度に不安に陥らないことが重要。不安を和らげるためにも、まずは妊娠期から産後にかけてのヘアサイクルについて理解していただくことが、第1です。

抜け毛はショートよりもロングの人の方が感じやすく、もともと髪の量が少ない方はどうしても敏感になってしまうと思いますが、産後脱毛は自然に元に戻りますので、あまり深刻に抱え込まずに、これまでのヘルスケアを見直すチャンスだとプラスに考えて、自分を励ましながら乗り越えていきましょう。

もしも、セルフケアがうまくいかずに悩んでしまったときには、皮膚科に相談してみましょう。

辛いときは「助けを求めて」

育児中は、睡眠不足によるストレスや生活習慣の乱れがホルモンのバランスを崩して抜け毛を誘発し、それがまたストレスになって…という悪循環に陥りがちです。

とはいえ、育児中のストレスは避けられないもの。夜泣きがつづいていたり、栄養不足になっていたりと、心身ともに疲れてしまったときは、周囲に「助けをたくさん求めること」がとても大切です。一人で抱え込まずに、家族や地域のサービスをぜひ頼ってください。

髪の「健康度チェック」していますか?

忘れていけないのは、髪は「死んだ細胞」であるため自ら修復できません。定期的なケアが必要です。髪のパサつき、ハリ・コシ、ツヤ、枝毛・切れ毛など定期的に髪の健康度をチェックしましょう。

髪の洗い方や乾かし方は適切ですか?

  • 入浴前のブラッシングは、毛先から優しくとく
  • シャンプー前のオイルトリートメントも効果的
  • ぬるま湯で丁寧にすすぐ (汚れの大部分はお湯で落ちます!)
  • シャンプーは泡立ててつける
  • 洗うのは、1回で十分。指の腹で頭皮を良く洗いましょう
  • シャンプー後はしっかり洗い流す
  • タオルドライ (ごしごしふかない) 後、ドライヤーでできるだけ早く乾かす

良質な睡眠をとれていますか?

  • 授乳などで十分な睡眠がとれないかもしれません
  • 赤ちゃんと一緒に昼寝をしたり、休息する時間を作る
  • 睡眠前には、スマホやテレビなどのブルーライトを避ける
  • 眠りの質を上げるために、入浴は眠る1~2時間前、お湯の温度は40度程度のぬるめに設定

バランスの良い食事をしていますか?

髪はタンパク質であるケナチラミンから構成されています。そして亜鉛は、タンパク質を効率よく利用するために欠かせない栄養素です。また、髪の健康には、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンEが欠かせません。髪の成長には、鉄が重要です。抜け毛が多い人のなかには、産後の貧血が長引いている可能性もあります。

また、妊娠期に増えた体重をもとに戻そうと無理な食事制限をすると髪の質が悪くなり、脱毛も悪化してしまいます。生活リズムや食事のバランスを整えることが改善の第一歩です。

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